作品番号事典

~作品番号の由来と作曲家別作品番号~ 


 

【作品番号について】 

 

作品番号は
(1)作曲者自身が付けた番号
(2)出版社が出版時に付けた番号
(3)作曲者の死後に、別の人が整理して付けた番号  

の3つに大きく分類される。

作品番号とは、クラシック音楽の作曲家の作曲した楽曲に付される認識番号。おおむね、作曲の若い順に付けられる。作曲家が自ら付ける場合もあるが、楽譜出版社によって付けられることもある。そのため、作曲順というよりも出版順となることも多く、後人の混乱の元になることも多い。同じ理由などにより、最初の作品が出版されるより前の作品には付番されないこともある。逆に、生前番号が付けられず、没後に出版された曲にも付番されないことがある。このような曲は作品番号で呼ぶ代わりに「遺作」と呼ぶことがある。(出典: フリー百科事典・ウィキペディア(Wikipedia)による)

作品に番号をつけて整理する考え方は、19世紀中ごろに、出版社が楽譜出版での収入策として出てきた。このため、バッハやモ-ツァルトには作品番号に相当するものがない。番号制定は、器楽曲やミサ曲に限られていた。声楽曲の場合は、題名や歌詞により容易に判別できたから除外されたという。

作品番号は楽譜商が販売に当たって便宜上整理番号をつけたのであって、作曲順とは無関係であった。
例:

シュ-ベルトの魔王は、1815年作曲でOp.1であるが、それ以前に300曲以上作曲されている。ハイドンのOp.3には、複数の楽譜商がかかわったため、9種類もの別々の作品につけられたりしている。

系統だった番号管理は、ベ-ト-ベンやシュ-ベルトのころから始まりだしたが、当時はまだ不十分で、シュ-マンのころから本格的になる。そののち作曲家自身が全作品に番号をつける時代となっていく。ただ、ブラ-ムスは初期の作品をすべて廃棄しているし、バルト-クのようになんども作品1から番号を付け直していたりして輻輳している。


 

Op.  :ラテン語″opus″(オーパス)の略であり、ラテン語で作品、芸術品、著作物、仕事という意味。opera(オペラ)はopusの             複数形。

1597年、イタリアのフィレンツェの宮廷で、初めて大掛かりな音楽劇「ダフネ」が上演された。作品全体が音楽で構成されている、こういった演劇をイタリア語で″opera in musica(音楽の作品群)″と言い、いつしか″in musica″が省略され、″opera″だけでも「歌劇」をさすようになった。

一般的には作品の年代順を表すものだが、必ずしも作品番号が作曲された年代と一致しない場合もある。大抵の場合、曲が出版された順につけられることが多い。

初めて作品番号を使用した作曲家はAdriano Banchieri(1568?1634)だといわれる。

(例:ベートーヴェン 交響曲第5番 Op.67)

 

Anh.      :追加(Anhang)、補足の意味の略語。作品目録が作られた後に追加される場合に付けられる番号。

(例:Menuett BWV Anh.113)

 

Op.post.:<死後出版>opus postumus〔ラテン語:オプス・ポストゥムスの略)ラテン語のpostumus、最後の、遺されたという意味。

 

Opp番号:ブラームスの間奏曲のように、同時期に複数作曲出版された場合に表現する時がある。


【作曲家別 作品番号について】

●アルベニス(Isaac Albeniz「西」1860-1909)⇒B    

Baytelman-Dobry / Pola Isaac Albeniz: Chronological List and Thematic Catalog of His Piano Works

●J・S・バッハ (Johann Sebastian Bach「独」1685-1750)⇒BWV    

<バッハ作品目録>
ジャンル順に通し番号が振られている。
(Bach Werke Verzeichnis〔ドイツ語〕バッハ・ヴェルケ・フェアツァイヒニスの略)Werkeは作品、著作物、Verzeichnisは目録、目次、表という意味。ドイツの音楽学者、ヴォルフガング・シュミーダー(1901- 1990)が1955年に発表したJ.S.バッハの作品目録の整理番号で作品分類による番号で、作品年代順ではない。BWV番号はバッハの作品の1120曲につけられている。

バッハのシュミ-ダ-番号は、逆に作曲年代の特定が難しかったゆえに、ジヤンル別に整理されたものであり、新発見の作品と偽作と判定された作品以外では改定されていなく、混乱性はない。

BWV  1 - 224 カンタータ
BWV  225 - 249 モテット・ミサ・受難曲等
BWV  250 - 524 コラール・歌曲・アリア等
BWV  525 - 771 オルガン曲
BWV  772 - 994 クラヴィーア曲
BWV  995 - 1040 室内楽曲
BWV  1041 - 1071 管弦楽曲
BWV  1072 - 1080 特殊作品
BWV Anh.  1 - 189 (補遺)


この中にはその後の研究によって偽作と判明したものや、本来別ジャンルの作品であったことが判明した曲も数多くあり,また新たに発見された曲もあり、1990年の第2版ではBWV1120まで採録、補遺はBWV Anh. 205までつけられている。

作品番号の後ろについている"a" "b"は、同一作品の異稿を示している。たとえば、BWV1060「2台のチェンバロのための協奏曲 ハ短調」は、BWV1060a「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ハ短調」からの編曲をあらわしている。

●J・S・バッハ (Johann Sebastian Bach「独」1685-1750)⇒BC   

<バッハ作品目録>HJシュルツェとChヴォルフによる、新目録(バッハ・コンペンディウム)によるBC番号

(例)オブリガート付コラール「主よ、人の望みの喜びよ」を含むBWV 147に関する記述でのタイトルは、BWV 147: Herz und Mund und Tat und Leben (NBA I/28; BC A174)となっている。略号のNBAとは新バッハ全集、BCはバッハ・コンペンディウムを指している。

●C・P・E・バッハ(Carl Philipp Emanuel Bachバッハの次男「独」1714-88)⇒Wq(ヴォトケン)    

Carl Philipp Emanuel Bachの作品目録 Alfred Wotquenneが整理し1905年に出版した目録の番号。
編成別、年代順、通し番号
(例)  Sonate G-Dur Wq 133 fl bc   Sonate a-moll Wq 132 fl solo<ベルリン、ハンブルグのバッハ>

●C・P・E・バッハ(Carl Philipp Emanuel Bachバッハの次男「独」1714-88)⇒H(ヘルム)

ヘルム番号Eugene Helmが整理し出版した、カールフィリップ・エマニュエル・バッハの目録番号。
編成別、年代順、通し番号。
Helm, E. Eugene / Thematic Catalogue of the Works of Carl Philip Emmanuel Bach<ベルリン、ハンブルグのバッハ>

●W・F・バッハ(Wilhelm Friedemann Bach:バッハの長男「独」1710-84)⇒F(ファルク)

バッハの長男のWilhelm Friedemann Bachの目録番号 Martin Falckが1913年に出版したF.番号
(例)Trio Sonate D-Dur F47 2fl,bc<ハレのバッハ>

●J.C.バッハ(Johann Christian Bach:バッハの末子「独」1735-82)⇒T(テリー)

Terry, Charles Sanford / John Christian Bach<ミラノ、ロンドンのバッハ>

●ブクステフーデ(Buxtehude,Dietrich「独」1637-1707)⇒Bux WV.    

BuxWV.はG.カールシュテットの作品目録(Buxtehude-Werk-Verzeichnis)の略

●ボッケリーニ(Boccherini,Luigi「伊」1743-1805)⇒G

Gerard, Yves / Thematic, Bibliographical and Critical Catalog of the Works of Luigi Boccherini

●ベルリオーズ(Berlioz,Hector「仏」1803-69)⇒H

Holoman, D. Kern / Catalogue of the Works of Hector Berlioz

●ベ-ト-ベン(Ludwig van Beethoven「独」1770-1827)⇒Op

ベートーベン自身の手によって付けられた作品番号。生前に出版されたものを中心にOp.1 からOp.138まである。

●ベ-ト-ベン(Ludwig van Beethoven「独」1770-1827)⇒WoO

<ベートーヴェン作品番号のない作品目録>
(Werke ohne Opuszahl〔ドイツ語〕ヴェルケ・オーネ・オープスツァールの略)
ベートーベンが作品番号をつけなかった205曲。
ドイツの音楽学者キンスキーと、文献研究家ハルムによる作品目録の整理番号。1955年キンスリー Georg Kinsky(1882 - 1951)/Das Werk Beethovens
「エリーゼのために」はWoO.59

ベ-ト-ベンの時代になると、出版に際して与えられた作品番号が一般に流布していたため整理したキンスキ-は存在する番号には手をいれず、いまだ番号を持たない作品のみを年代順に並べ、WoOという番号を与えた。

●ベ-ト-ベン(Ludwig van Beethoven「独」1770-1827)⇒Hess番号

ベ-ト-ベンの作品でOp.もWoOもない作品のこと。
1957年に全集に採録されていない作品にW. ヘスが1957年に番号付けを行い、それらはHess番号と呼ばれている。
この目録には未完成の作品や草稿なども含まれている。
上記のWoOと重複して振られている番号もあるが、Op., WoOが付けられていないものに対して使うことが殆ど。
Hess, Willy / Verzeichnis der nicht in der Gesamtausgabe Veroffentlichten Werke Ludwig van Beethovens

●ブルックナー(Anton Bruckner「墺」1824-96)⇒WAB

ブルックナーの作品番号
グラ-スベルガ-(R・Grasberger)による「ブルックナ-- Werkverzeichnis AntonBruckner」の整理番号。
演奏される形式は、R.ハ-ス校訂の原典版と、ノ-ヴァク校訂の原典版が主で、その他の版でも演奏される。

●バルトーク(Bela Bartok「ハンガリ-」1881-1943)⇒Sz

Szollosy, Andras/ Bibliographi des oeuvres musicales et ecrits musicologiques de Bela Bartok
バルト-クの作品のOp.番号には何度も最初から付けているため、1890年からのもの、1894年からのもの、1904年からの3つがある。

●ドビュッシー(Claude Debussy「仏」1862-1818)⇒L(I)ラサール   

<ドビュッシー作品番号>
Lesure, Francois / Catalogue de l'oeuvre de Claude Debussy
フランスの音楽学者でドビュッシー研究家の、フランソワ・ルシュルの略字(例) Suite Bergamasque ベルがマスク組曲 L.75

●ドボルザーク(Dvorak,Antonin「チェコ」1841-1904)⇒B

Burghauser, Jarmil / Thematichy Katalog-Bibliografie

●ヘンデル(George Friedrich Handel「独→英」1685-1759)⇒HWV

<ヘンデル作品目録>
HWVはヘンデル作品総目録 Verzeichnis der Werke Georg Friedrich Handels の略であり、バーゼルト(Bernd Baselt)によって1978年から1986年に出版された目録。

J.S.バッハのBWV番号と同様、ジャンル別に整理されている。
Bernt Baseltが整理し、新ヘンデル全集により1984年に出版された作品目録。
Baselt, Bernd / Verzeichnis der Werke Georg Friedrich Handels

HWV 1 - 45 オペラ
HWV 46 - 76 オラトリオ
HWV 77 - 228 カンタータ・声楽曲等
HWV 229 - 286 教会音楽
HWV 287 - 356 オーケストラ曲
HWV 357 - 425 室内楽曲
HWV 426 - 610 鍵盤楽器曲

 

●ハイドン(Franz Joseph Haydn「墺」1732-1809)⇒Hob.(ホーボーケン)

<ハイドン作品目録>
ジャンル別に付番されている AnthonyvanHoboken / Thematisch-bibliographiches Verkverzeichnisホーボーケン(1887~)の略)

オランダの音楽学者アントニー・ヴァン・ホーボーケン Anthony van Hoboken (1887 -1983)による、ハイドンの作品目録の整理番号。
ヴィヴァルディのファンナ番号と同じく、ローマ数字(I から XVIまで)とアラビア数字 (1, 2・・・)の組み合わせによってジャンル別に整理されている。
楽曲形態ごとに番号が付けられている。部門をローマ数字で、曲番をアラビア数字で表記している。
(例) Sonate  hob.16-35

1 交響曲
2 4声部以上の管弦合奏曲
3 弦楽4重奏曲
4 管弦合奏3重奏曲
5 弦楽3重奏曲
6 弦楽2重奏曲
7 管弦楽器のための協奏曲(a:ヴァイオリン,b:チェロ,c:コントラバス etc)
8 管楽合奏用行進曲
9 管楽合奏用舞曲
10 4声以上バリトン合奏曲
11 バリトン3重奏曲
12 3声以下バリトン(合奏)曲
13 バリトン協奏曲
14 クラヴィア4,5重奏曲
15 クラヴィア3重奏曲
16 クラヴィアソナタ
17 クラヴィア独奏曲 XⅧ  クラヴィア協奏曲
18 音楽時計曲
19 音楽時計曲
20 受難曲
21 オラトリオ
22 ミサ曲
23 各種教会音楽
24 カンタータ・アリア
25 重唱曲
26 独唱曲
27 カノン
28 オペラ
29 ジングシュピール
30 劇音楽
31 編曲
32 パスティッチョ


作品目録文献略語表としては他にマルティエンセン校訂のペータース版、ペスラーのプライトコップ全集版、クリスタ・ランドンによる新全集 "Wiener Urtext Edition"(UT)などがある。

●リュリ(Lully,Jean-Baptiste「伊→仏」1632-87)⇒LWV

Schneider, Herbert / Chronologisch-thematisches Verzeichnis samtlicher Werke von Jean-Baptiste Lully

●リスト(Franz Liszt「ハンガリ-」1811-86)⇒サーベ番号(S)・ラーベ番号(R)

イギリスの作曲家ハンフリー・サールが分類した曲目別の目録であるサール番号(S.)と、リスト博物館館長のペーター・ラーベによる曲目別のラーベ番号(R.)の二つが用いられているが、現在ではサール番号のほうがよく使われているSearle, Humphrey / The Music of Liszt

●モ-ツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart「墺」1756-91)⇒K.またはKV

<モーツァルト作品目録>
Kochel Verzeichnis〔ドイツ語〕ケッヘル・フェアツァイヒニスの略)Koechel, Ludwig Ritter von / Chronologisch-Thematisches Verzeichnis Samtlicher Tonwerke Wolfgang Amade Mozarts

オーストリアのモーツァルト研究家、ケッヘル(Ludwig von Kochel)(1800~1877)による作品目録の整理番号でモーツァルトのすべての作品に年代順をつけたもの。ケッヘルは、オーストラリアの植物学者であり鉱物学者でもあったが、日ごろからモーツァルトを敬愛し、モーツアルトの死後、約70年余りの1862年に モーツァルト全作品年代順主題目録 Chronologisch-thematisches Verzeichnis samtlicher Tonwerke Wolfgang Amade Mozarts として作品を収集、整理して1892年に作品目録を完成させた。

Kはケッヘルの、KVはケッヘルの作品目録という意味で使われる。.他の有名なBWV , Hob.といった整理番号との大きな相違は、作品ジャンル別ではなく"作曲年代順"につけられた番号であるということ、また19世紀に作られたものである、という点。

それ故に、偽作が多く含まれていたり、作曲年代が不明なものについては(1784年以後はモーツァルト自身が作品ノートを記録していた)独断と偏見で順序を決めるなど、その番号付けにはかなりあいまいな部分がある。
また、新しい譜面の再発見などもあり、多くの改訂が必要となってきた。
ケッヘル目録は現在、第7版が普及しているが、すでにさらなる改定の必要性が言われている。(二重番号制、三重番号制に至った経緯)1862年の初版発行以来、これまでに5回の改訂が加えられてきた。

そのうち、特に重要な改訂として位置付けられているのは、1936年にアルフレッド・アインシュタインAlfred Einstein (1880-1952:有名な物理学者の従兄弟)によって改訂された第3版、および、ギーリング Franz Gieglingらによって1964年に出版された第6版。これらの改訂の際には「新しい番号をどう記述するか」という問題が生じた。後の研究で作曲年代の誤りが指摘されて並び替えの必要が生じた曲が多数生じたが、既にケッヘルによってつけられた初版の番号が広く使われているため、安易に番号を変更することができなかった。それを解決するために、アインシュタインは小文字を添え字として使うことで、ケッヘルの初版を崩さずに作曲年代順に並べることにした。
例えば、「ミサ曲 ハ短調 "孤児院ミサ"」は初版ではK.139となっていたが、これはK.114とK.115の間に作曲されたものであるということになったので「K.114より後でK.115より前」ということを示すK.114aという新番号が付けられた。複数曲を割り込ませる必要があるときは"a", "b", "c", "d", "e"と順に振っていった。K.330(300h)、K.332(300k),K.400(372a)等々。また、その番号が第3版での改訂であることを明確に示すために、K(3).114aという書き方を用いているケースもある。その後の改訂時にさらに変更が必要となった曲がでてきた。
例えば、前出の「ミサ曲 ハ短調 "孤児院ミサ"」は初版でK.139、第3版でK(3).114aとなったわけですが、その後もっと早い時期に作曲されたということになり、第6版ではK(6). 47aとなる。つまり"K.139 = K(3).114a = K(6). 47a"となる。最近では変更が加わった番号については、初版と第6版をスラッシュや括弧で併記することが多い。「ミサ曲 ハ短調 "孤児院ミサ" K.139(47a)」 「ミサ曲 ハ短調 "孤児院ミサ" K.139/47a」。さらに第3版で割り込ませた添え字のついた曲と曲の間に、第6版で別の曲を割り込ませる必要もでてきた。たとえば、K(3).173dとK(3).173eの間に2曲割り込ませなくてはならなかったので、今度は添え字を大文字にして使うことになる。こうしてこの2曲の間には、「交響曲 第24番 変ロ長調 K.182=K(6).173dA」「交響曲 第25番 ト短調 K.183 =K(6).173dB」という複雑な作品番号の曲が存在することになった。現在、コーネル大学のNeal Zaslaw教授らにより次版の出版作業が進められているが、そこではケッヘルの基本的な手法は尊重しつつ、前版までの形式を踏襲しない「新しい番号付け」を行う動きがある。

●ニールセン(Nielsen,Carl「デンマ-ク」1865-1931)⇒FS

Fog, Dan; Schousboe, Torben / Carl Nielsen, kompositioner

●パーセル(Purcell,Henry「英」1660頃-1717)⇒Z

Zimmerman, Franklin B. / Henry Purcell: Melodic and Intervallic Indexes to his Complete Works

●D・スカルラッティ(Dmenico Scarlatti「伊」1685-1757)⇒L.(Ⅱ)ロンゴ

<スカルラッティ作品番号> 
ロンゴ番号(L.)は、チェンバロソナタに付けられた番号Longo, Alessandro / Indice tematico delle sonate per clavicembaloスカルラッティの作品目録を作ったイタリアの作曲家、ピアニストであるアレクサンドロ・ロンゴLongo)の略字。

スカルラッティに関心の深かった彼は、1892年にナポリでスカルラッティ協会を設立し、作品を整理した。今日ではスカルラッティの作品にはKとLの2つの番号を併記することが多い。(例)Sonata D-dur, K.490 (L.206)

●D・スカルラッティ(Domenico Scarlatti「伊」1685-1757)⇒K(カークパトリック)   

<スカルラッティ作品番号> 
カークパトリック番号(K.)、ロンゴ番号(L.)は、チェンバロソナタに付けられた番号Kirkpatrick, Ralph / Dominico Scarlattiスカルラッティの鍵盤楽器ソナタを整理して出版したアメリカのハープシコード奏者、ラルフ・カークパトリック(.Kirkpatrick)の略字。

モーツァルトの作品番号と同じKで表記されるが、上記のLと併記されることによって区別される。(例) Sonata a-moll, K.61 (L.136)

●シュ-ベルト(Franz Schubert「墺」1797-1828)⇒D(ドイチェ)

<シューベルト作品目録> 
作品番号があるものにも付番され、併用される(Deutsch ドイチュの略)Deutsch, Otto Erich / Franz Schubert: Themastisches Verzeichnis seiner Werke in chronologischer Folge

オーストリアの音楽文献学者、ドイチュ(Deutsch1883~1967)が編纂した作品目録の整理番号。シューベルト研究の権威者として、全998曲のシューベルト作品を年代別に番号をつけた。
ただし、例:Op.1《魔王》)のように全ての作品に付けたわけではなく番号の連続性もない。また、未完成作品の扱いの解釈などが定まっておらず、何種類かの整理番号が併用して用いられたり、題番号の変更がなされたりしている。

(交響曲"第8番「未完成」"から"第7番"への変遷の経緯)

A

B

C

           
     

未完

 

断片

D.2B

 

1811?

1

1

 

ニ長調

 

D.82

 

1813

2

2

 

変ロ長調

 

D.125

 

1814-15

3

3

 

ニ長調

 

D.200

 

1815

4

4

 

ハ短調

 

D.417

悲劇的

1816

5

5

 

変ロ長調

 

.485

 

1816

6

6

 

ハ長調

 

D.589

 

1817-18

     

未完

 

スケッチ

D.615

 

1818

     

未完

 

スケッチ

D.708A

 

1820

 

7

 

未完

 

スケッチ

S.729

 

1821

 

8

7

未完

ロ短調

 

D.759

未完成

1822

7

9

8

ハ長調

 

D.944

大ハ長調

1825-26

     

未完

 

スケッチ

D.936A

 

1828?

A「大ハ長調」が出版された当時は、第1-6番までしか知られておらず、文字通り第七番目の交響曲として与えられた。その後、1865年になって「未完成」が発見されたため、8番目の交響曲として番付された。1897年完成の「シューベルト旧全集」では、完成済み交響曲7曲を作曲年代順に並べ、その後ろに「未完成交響曲」を置いている。第7 「グレイト」 8 「未完成」

B1951年のドイチュによる作品目録では未完成の「ホ長調 D.729」を加え、新しい時代考証による作曲年代順の変更を行ったことにより、次のような順序に変更された。第7 「ホ長調 D.729 8 「未完成」 9 「グレイト」

C1978年に発行されたドイチュの目録改訂版では、「ホ長調 D.729」は自筆譜では演奏不可能ということで省かれ、それによって番号が繰り上がった結果、第7 「未完成」 8 「グレイト」ということになった

●テレマン(Georg Philipp Telemann「独」1681-1767)⇒TWV

<テレマン作品目録>
Ruhnke,Martin/GeorgPhilipTelemann: Thematisch-Systematisches Verzeichnisseiner WerkeMartin Ruhnkeが整理し、1984年から刊行中のカタログの番号、ベーレンライターの「テレマン選集」に対応,初めての数字が編成、次が調性、最後が枝番(例) 4 Sonaten F-Dur TWV41:2 B-Dur TWV41:B3 f-moll TWV41:f1, C-Dur TWV41:C2

●ヴィヴァルディ(antonio vivaldi「伊」1678-1741)⇒<四季>

<四季>の表示総合例

ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 《春》 RV269 FI-22 Op.8-1 P.241
ヴァイオリン協奏曲 ト短調 《夏》 RV315 FI-23 Op.8-2 P.336
ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調 《秋》 RV293 FI-24 Op.8-3 P.257
ヴァイオリン協奏曲 ヘ短調 《冬》 RV297 FI-25 Op.8-4 P.442

 

●ヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi「伊」1678-1741)⇒R,RV(リオム)

<ヴィヴァルディ作品目録番号>
ヴィヴァルディの作品を整理し,出版したフランスのピータ・リオム(Ryom)の略字である。初版1974年、第2版1979年出版リオム以外にも、マルク・ポンケルル(P)や、アントニオ・ファーナ(F)による目録が出版されたが、リオムの目録がいちばん包括的で多く用いられる。

Rはリオム番号(Ryom Verzeichnis)の略で、RVと記されることもある。Ryom, Peter / Verzeichnis der Werke Antonio Vivaldis

(例) Concerto No.1 in D major, RV.549作品番号は、生前に出版された Op.13 まではそのままOp.を使用。
作品番号なしの協奏曲ではパンシェル番号 P. を、全体にはリオム (P.Ryom) の整理番号 RV を用いている。
(例)Concerti a flauto traverso Op.10 フルート協奏曲 La tempesta di mare RV.433 / ヘ長調「海の嵐」 [7'00"] La notte RV.439 / ト長調「夜」 [9'00"] Il cardellino RV.428 / ニ長調「五色鶸 (ごしきひわ)」 [9'10"] RV.435 ト長調 [6'45"]  RV.442 ヘ長調 [7'40"] RV.437 ト長調 [8'10"]

●ヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi「伊」1678-1741)⇒P(パンシェル)

Marc Pincherle(1888 - 1974)の"Antonio Vivaldi et la musique instrumental"(1948年出版)による番号。
(1)ソナタおよびトリオ、(2)シンフォニア、(3) コンチェルトの3つの作品群にわけた。
(1)については、カタログの何ページの何番目にあるか、という番号付けとした。例えばP.p. 6/3, PS 6/3のように表記される。(2)(3)については、それぞれに1から23、1から447までの番号を振って示している。

●ヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi伊」1678-1741)⇒F(ファンナ)

Fanna, Antonio / Opere strumentali di Antonio Vivaldi: Catalogo numerico-tematico 1968年出版ファンナ番号はローマ数字(I から XVIまで)とアラビア数字 (1, 2・・・)の組み合わせになっていて、ローマ数字は曲の編成別の作品群を示している。

1 ヴァイオリン協奏曲
2 ヴィオラ・ダモーレ協奏曲
3 チェロ協奏曲
4 ヴァイオリンとチェロの協奏曲
5 マンドリン協奏曲
6 フルート協奏曲
7 オーボエ協奏曲
8 ファゴット協奏曲
9 トランペット協奏曲
10 ホルン協奏曲
11 弦楽のための協奏曲
12 その他の協奏曲
13 トリオ・ソナタおよびヴァイオリン・ソナタ
14 チェロ・ソナタ
15 フルート・ソナタおよびオーボエ・ソナタ
16 その他のソナタ

 

●ヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi「伊」1678-1741)⇒RN(リナルディ)     

Rinaldi, Mario / Catalogo numerico tematico delle composizioni di Antonio Vivaldi 1945年出版ヴィヴァルディ自身が作品集としてまとめて出版したOp.1からOp.13に対し、それら以外の器楽曲についてOp.16から67を当てはめた形となっている(声楽曲はOp.101より振られている)。Op.14,15が抜けているのは、将来的にこれらが発見された場合に番号が重複するのを避けるため。

●ワーグナー(Wagner,Richard「独」1813-83)⇒WWV

Deathridge, John; Geck, Martin; Voss, Egon / Wagner Werk Verzeichnis: Verzeichnis der musikalischen WerkeRichard Wagners und ihrer Quellen

●ウェーバー(Weber,Carl Maria von「独」1786-1826)⇒J

Jahns, Friedrich Wilhelm / Carl Maria von Weber in seinen Werken: Chronologish-Thematisches verzeichnis seiner samtlichen compositionen